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【特別審査員による総評】

松原ヒロ



出演者の皆さん、お疲れさまでした。
各グループ、それぞれの趣向がしっかりと感じられ、楽しく審査をさせていただきました。
また、自分がチャレンジしていた大学生の頃(10年前くらいですね)と比べると格段に演奏の質は上がっており、 日本のアカペラ文化の隆興を改めて実感する機会にもなりました。

個人的に今回の審査では、各グループ気になった点をとりあえず列挙し、それが少ない所を単純に上位にするといった形を取ってみました。(特筆すべき魅力的な点も考慮。)
ここではどういった理由でその数の差が出てきたのか、僕なりに推測したことを記しておこうと思います。が、その前に順位に関わらず全体で感じたことを一つ挙げます。

◯バンマス力
今回、各グループで割と曲調やジャンルを絞って選曲している所が多かったように思います。
ただ、細かい所でその曲調、ジャンル「らしさ」を突き詰められていないのではないか、そんなほころびを感じる部分がありました。

例えば、そのジャンルが求めているベースの音色、音の長さになっているか。ドラムのフレーズになっているか。 コーラスのアクセントの付け方は、足りているか。
技術的にはできるはずなのに。あとほんの少し変えるだけでいいのに。そういう惜しさがありました。
その惜しさは、オーディエンスに知識がなくとも、心の底で違和感を残してしまいます。
逆の言い方をすると、本当に熱狂させることができなくなってしまう。
ステージを見る側として、何となくそういう経験をしたことはないでしょうか。
基本的な能力が全体として上がってきている以上、よりジャンルを深く調べあげ、魅力的に聴こえる「共通項」を探っていき、それをバンドに還元する姿勢が大事になってきます。
演奏する楽曲だけでなく、その周辺の音楽を理解する。練習だけでなく、そういった時間をしっかりと作るようにしてほしいと思います。

そして、以下2つが差があるなと感じた点です。
◯チーム力
音楽的な点だけでなく、今回僕が気になった点としてこういったものがありました。

「ステージへの入り方が雑である」
「曲のカウントに雰囲気がない」
「リードシンガーの声は魅力的だけど、目線が動きすぎていて気になる」
「MCから曲に入る間がもったいない」
どれも、ふと気がつけばすぐに修正ができるものではないでしょうか。
ただ、やっている本人は必死にやっていて客観的に見る余裕がないもので、だからこそ周りからのフィードバックが大事です。
せっかくメンバーが何人もいて、一つのことを複数の視点から見れるわけですしね。

練習のとき、自分は引っ張る役じゃないからと受け身になっていませんか?
毎回何か一つでも、気がついたことを発信してみよう。そういった積極的な姿勢を全員で共有しているグループが魅力的になるのだと感じました。
そして、他のメンバーから指摘されたことをしっかり受け止める姿勢も、もちろん大事です。

◯思いやり力
チーム力とも重なりますが、つまりは相手のことを思って行動できるか。そこに尽きます。
ここでは相手というものに、オーディエンスを含めてみましょう。オーディエンスが自分をみたときに、ふと現実に帰らせてしまうような瞬間を作っていないでしょうか。
上記で指摘してきたことは、結局ここにつながります。
練習を重ねて行く中で、そういった意識を持って取り組んでいるかどうか。それができているグループは、目立たないパートのメンバーからもつねに伝わってくるものがあります。
この差が大きくステージの印象に影響していると感じました。

また、例えば好きなミュージシャンがライブで
「こんにちは、◯◯と言います。私は、××というコンセプトで活動しています。では次の曲を聞いてください」
というMCをしたら、何だか冷めてしまいませんか?
実際はどういう内容で話しかけているでしょう。
それを考える根本にあるのが、思いやりの気持ちだと思います。

以上です。

もちろんコーラスの抑揚やフレーズの作り方などの技術面でも、グループによって指摘すべき点は大なり小なりあったのですが、高いレベルでほぼ拮抗していました。
そこを突き詰めた上で、どこまでその先を考えられたか、そこに差が生まれたのだと思います。
当日もお伝えしましたが、まずは自分たちが楽しむことが優先ですし、そのための技術の習得が第一です。この講評が、そこからのステップアップの一つの視点になれば幸いです。

松原ヒロ


MaL



この度、JAM2016の2次審査をさせていただきました。MaLと言います。
今年も多種多様な演奏を聴くことができました。30組を10時間かけて審査するという長丁場に、始まる前は「さぁ今日は大変だぞ」と自分を励ましていたのに、終わる頃になると「あぁもう終わってしまうのか」と寂しくなってしまったほどです。

僕は昨年も1次、2次、本選と審査させていただきました。その1次審査の時にも講評を書かせていただいたのですが、やはり今年も同じ印象をいだきました。その点については昨年の講評も合わせてご覧いただければと思います。

JAM2015 1次審査講評

今年はさらにもう少し思ったことを書いてみたいと思います。
長文ですから覚悟して読んでください。

JAMに限らず、多くのアカペライベントが昔から掲げてきたテーマ。
「アカペラの良さを伝えたい」
これは昔から言われてきました。アカペラがイベントに行かなくては聞けなかった時代からです。その後TVなどでも取り上げられ、アカペラの認知度が一般の方達の中でも随分と上がりました。今回出場されていたみなさんの中にもそういうTVやムーブメント、youtubeがスタートのきっかけだった方もいらっしゃるかと思います。

それではアカペラの良さってなんでしょうか?
楽器を使わなくてもできるということ。人間だけでもこんなことができるのだということは聞き手にとっても確かに魅力です。

ここで少し脱線してみましょう。アカペラがなぜ生まれたのか。
諸説はありますが、15世紀から16世紀のルネサンス時代にさかのぼると言われています。
その時代のヨーロッパの音楽家たちの活躍の場は主に教会でした。
そもそもは神のメッセージを伝えるために歌われていた教会音楽。しかし音楽家たちは自分たちの力を見せつけるように複雑で派手な構成の音楽を作り上げていきました。楽器の伴奏がどんどん派手になっていくとともに、そこに載せられている神のメッセージが、歌詞が伝わりづらくなっていったと言います。そこで教会は派手な楽器伴奏を禁止しました。
そこから人の声を中心に奏でられるシンプルな形態a cappella(イタリア語で教会の意)が生まれたと言われています。

つまりアカペラの当初の目的は「人の声を使って伝えたいことをより伝える」ということだったのだと思います。

もちろん現代のアカペラは独自の進化を遂げましたし、皆さんは「神のメッセージ」を伝えるために歌っているわけではありませんよね。自分がかっこいいと思った曲でノッて欲しいとか、感動したあの響きを伝えたいとか、自分が思っていたことを代弁して歌ってくれている曲をカバーして共感して欲しいとか、人によっては伝えたいことをオリジナル曲に込めたりします。
そういう音楽を自分たちの体のみを使って演奏しています。
つまり伝わっていかなくてはいけないのは、皆さんの声の魅力と共に、感性や個性。どんなことを良いと思っているか、面白がっているか、それにどれくらいの想いと努力をつぎ込んできたか、なのではないかと思います。
それを皆さんの声ならではの魅力に乗せてステージを展開して欲しいのです。

まず、誰よりも今自分が扱っている音楽のファンでいてください。こちらが思っている以上に聞き手に自分の音楽の良さが伝わるなんてことは稀です。歌い手は聞き手よりもその音楽を愛し、分析して、マニアックにこだわって欲しいと僕は思います。
だから色んなものを見聞きしましょう。先人たちが色んな手法で魅力的な音楽やステージを残してくれています。研究しましょう。皆さんの魅力を更に伝えるために。面倒なようでもそれは必ず皆さんのパフォーマンスで花開きます。僕もまだまだ勉強中です。
演奏はもちろん、MC、衣装、立ち姿も含めて、研究し、ステージに上がって降りるまでの間、聞き手に丁寧に自分たちの思う音楽の魅力を伝えていってください。
それらが美しく繋がったときに、聞き手は手放しで「いい時間だった」「素敵だった」「聞けてよかった」と思えるのではないでしょうか。

当然、リズム、ピッチ、演奏力は大事です。それが伝えたいことを台無しにしてしまうこともありますので、ひたすらに研鑽は積んでいただきたい。スポーツで言うところの筋トレや素振りと一緒です。必要です。その上で、それを上手に使いましょう。

今回もそんな視点で審査させていただきました。どんなことを客席に伝えたいのか、客席をどんな雰囲気にしたいのか。その為に自分たちの声や魅力をうまく活かせているか。
音楽は良いのに曲間でステージングが切れてしまう。ステージングはいいけども音楽を詰め切れていない。自分たちのやってる音楽の世界観に浸りきれていない。伝わっているかを意識しきれていないというシーンもありました。そんなグループを見るたびに「あぁっ!もったいない!」とジリジリしました。

「アカペラの良さ」というのは、聞き手にとってはどこまでいっても「それを歌っている皆さんの魅力」だと僕は思います。シーンなんてものはいつだって、皆さんがやっている音楽の集合体でしかないと思います。その上で、皆さんはそれぞれがミュージシャンです。趣味でも本気でもそれは確かです。大きくても小さくても、皆さんの歌声が作るステージがシーンになっていくんではないでしょうか。
僕はいちオーディエンスとして皆さんのステージに共感して、時には驚いて、「やっぱりアカペラっていいなぁ」と思いたいのです。

今回、ラゾーナ川崎で行われる本選だけでなく、全国でアカペラを楽しまれている皆さんのステージが、そんな風にアカペラの輪をこの日本に広げていってくれることを期待しています。

Breath MaL





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